事業紹介

地域のウメ産業との共生

越生町は人口1万1千人の町ですが、
関東三大梅林の一つに数えられる「越生梅林」があり、ウメの産地として長い歴史があります。
越生町でのウメの栽培の歴史は古く、南北朝時代にはすでに梅の木が栽培されていました。
江戸時代にはウメが越生の特選品として広く知れ渡っており、生梅の出荷も行なわれていたとされています。
太宰府天満宮から現在の梅園神社を分祀した際、菅原道真公にちなんで梅を植えたのが起源とされており、
現在では梅林周辺も含めると開花期には約20,000本もの梅が咲き誇ります。

梅には受粉しにくい性質を持つ品種が多く存在するため、効率的にたくさんのウメの実の収穫を目指すには
確実な受粉を促すことが必要になります。そこで活躍するのが“ミツバチ”です。
梅の花の時期(2~3月)にミツバチの巣箱を梅林に設置することで
約3倍もの収穫量の差が出ると言われています(1964:徳島農政)。

このような放飼はミツバチにとっても大きなメリットがあります。
2~3月に放飼を行うことで、春先のまだ寒い時期に梅の花粉と蜜で栄養を補給できるのです。
梅の開花が盛んでない地域だと、梅の後に咲く桜などの蜜を食べきってしまいます。
越生のミツバチは梅の蜜でウォーミングアップができているため、桜の時期には元気いっぱい。
蜜をたくさん収穫し、巣に貯めることができるというわけです。

越生町では現在、梅農家の高齢化と後継者不足が深刻です。
梅農家と生産量がともに減少していくことが懸念されています。
そんな状況の中、2022年4月に【寺田養蜂園】としての経営がスタート。
越生町の魅力ある豊かな自然と梅産業を、後世に残していきたい。
その一心で経営者自身が梅農家となり、地域の産業を盛り上げています。

越生町内でミツバチを育てる

養蜂家は花の開花に合わせてミツバチの巣箱をトラックに積み、南から北へ移動します。
一方寺田養蜂園は越生町の自然の中から採れるはちみつにこだわっているため、大きな移動はしません。
越生町内でミツバチを育てることを心がけています。

季節に合わせて、さまざまな花が咲く越生町。ゆずの栽培も盛んで、収穫量・出荷量は県内随一を誇っています。
ミツバチはゆずの花からも蜜を集め、梅と同様にゆずの結実にも貢献しています。
世界の主要作物の70%は昆虫や鳥による花粉媒介に依存していると言われているほど、
作物の育成・栽培には生き物たちの力がなくてはなりません。
人間の暮らしとミツバチは、想像以上に密接した関係性なのです。

環境の変化に敏感なミツバチの飼育を通して、里山の自然環境を知ることもできます。
ミツバチの様子をよくよく観察していれば、四季折々の里山の変化に気づくことができるでしょう。
里山の自然を保護するためには、ミツバチの蜜源を確保し、住みやすい環境を整えることが重要です。
ミツバチが元気いっぱい飛び回ることは、在来植物の保護と再生を助けることにもつながります。
梅の受粉も、越生町の農業振興も、里山の自然保護も…
ミツバチの力があってこそ、実現しているのです。

おごせのブランド

青ウメの収穫はすべて手もぎです。陥没果を防ぐため、午前10時までに収穫を終わらせています。
青ウメの特徴はフレッシュでさわやかな香りと、酸味の強さ。
梅ジュースや梅シロップ、梅酒を作るのにぴったりです。

収穫後はすべて手作業で選別作業をしています。
傷のあるものやサイズの小さいものを取り除き、鮮度のいい青ウメだけを厳選。
2品種の梅を栽培している当園では、白加賀と十郎合わせて50本の梅の木を育てています。

「白加賀」はエメラルドグリーンの美しい粒がそろった、果形豊かな品種です。主に梅酒を漬け込む際に多く選ばれています。
酸味がやや強いながらも、甘味とのバランスがよく、さわやかな味わいが特徴です。
5月下旬から6月下旬のおよそ1ヶ月の間で出回る白加賀は、群馬県をはじめとする関東地方での栽培が盛んです。
生産量は梅の品種の中で1番多いと言われています。

「十郎」は皮が非常に薄くて果肉が柔らかく、種が小さいという特徴があります。
6月中旬のごく限られた時期に収穫シーズンを迎える、希少なブランド品種です。
南高梅よりも果肉がジューシーで、梅酒にするとさっぱりとした酸味が引き立つ味わいに仕上がります。

純国産自家採り100%

寺田養蜂園では、越生町を中心とした地域で採れたはちみつを販売しています。
約20,000本の梅の木が植えられている越生町ですが、梅の花のはちみつはほとんど採ることができません。
2月中旬から3月中旬にかけて、梅の花の蜜と花粉はミツバチたちの貴重な食料になってしまうので、
はちみつとして貯めることは難しいのです。

しかし越生の梅によって一足先に育ったミツバチは、サクラなどの蜜を効率よく集めることができます。
また埼玉の山間部で自生しているトチノキやエゴノキなどの多彩な植物も、ミツバチたちの蜜源です。
春にはサクラやクローバー、夏にはサルスベリやヒマワリ、秋にはコスモスやセンダングサなど…
四季折々の植物が移り変わるため、ミツバチたちが蜜源に困ることはありません。

当園のミツバチは、越生町を中心に県内の豊かな里山にある植物だけから蜜を集めています。
このように年間を通して、地域に根づいた方法で採蜜することができるのは、
豊かな里山と自然があるからこそなのです。

元気なミツバチが集めるはちみつ

美味しいはちみつを育てるのは、元気なミツバチです。
養蜂家はミツバチを単体ではなく、コロニー(群れ)単位で健康に保つことを重視します。
健康なコロニーに必要なのが、働きバチの数を多く確保するための健全な世代交代です。
掃除や育児、蜜の熟成、門番、外での花蜜収集など、ミツバチの役割は日齢により変化します。
働きバチは約1ヶ月(冬季は約6ヵ月)ほどしか生きられません。採蜜を行うのは、その中でも限られた期間だけです。
この循環がうまく機能し、健康的なコロニーを維持することができれば、
季節を選ばずに質のいいはちみつをたくさん作ることができるというわけです。

私たちが目指しているのは、ミツバチが絶えることのない住みやすい環境づくり。
そのために生態系を崩すことがないよう、先輩農家と相談しながら
ミツバチが好む蜜源植物を増やす活動に取り組んでいます。
里山の土地開発や農業環境の変化が原因となり、
ミツバチが蜜を貯めることができる蜜源植物の数は年々減少傾向にあります。
ミツバチを守ることは、豊かな里山環境や自然を守ることにつながるのです。

百花蜜と単花蜜

はちみつの違いは、ミツバチが集める花の種類により変わります。
数種類の花の蜜から集めるはちみつが「百花蜜」、1種類の花の蜜から集めるはちみつが「単花蜜」です。
それぞれにいいところがありますが、混じりけのない花の純粋な風味を感じられるのは単花蜜でしょう。

ミツバチを自然のまま放ってしまっていると、
周囲のさまざまな花の蜜が混じってしまうため、単花蜜を作ることができません。
ミツバチが特定の花の蜜を集めるために、いくつかの習性を利用する必要があります。

1.ミツバチは蜜を取り尽くすまで、見つけた蜜源植物に集中して蜜を集めに行きます。
2.いい蜜源を見つけると仲間に知らせ、コロニー全体で採蜜を行います。

この習性を利用して、適切な時期に巣箱を山桜の群生地に設置することで、
ミツバチは集中して山桜の蜜を集めに行き、単花蜜を作ることができます。

寺田養蜂園では山桜やゆずをはじめとする「単花蜜」と、
季節折々の花の蜜が集まった「百花蜜」の両方を販売しています。
一つひとつ比べながら、花ごとの味や色の違いをぜひ楽しんでみてください。